USCPAはなぜ監査法人で金融監査に配属されやすいのか?
USCPA(米国公認会計士)を取得し、監査法人への転職を検討している方から、
「USCPAだと金融監査に配属されることが多いのでしょうか?」
「メーカーなどの事業会社の監査には行けないのでしょうか?」
といった質問を受けることがあります。
実際、監査法人への転職を希望するUSCPAの方が、銀行、証券、保険、アセットマネジメントなどを担当する金融部門へ応募されるケースは比較的多く見られます。
もちろん、USCPAだから必ず金融監査になるわけではありません。財務報告アドバイザリーや事業会社を担当する監査部門などに配属されるケースもあり、本人の経歴や希望、各法人の採用状況によって配属先は変わります。
では、なぜUSCPAは金融監査との相性が良いのでしょうか。
今回は、監査法人におけるUSCPAの位置づけも含めて、その理由を整理してみたいと思います。
そもそも金融監査とは?
金融監査とは、主に銀行、証券会社、保険会社、アセットマネジメント会社などの金融機関を対象とする監査です。
大手監査法人では、メーカーや商社、IT企業などを担当する部門とは別に、金融機関を専門に担当する部門が設けられていることがあります。
金融機関は、一般的な事業会社とはビジネスモデルそのものが大きく異なります。
そのため、監査で扱う論点にも特徴があり、金融商品、有価証券、デリバティブ、公正価値評価、ヘッジ会計、信用リスクなど、金融ならではの知識が必要になります。
監査の経験を積むだけでなく、金融業界そのものへの理解も深めていく必要がある領域です。
なぜUSCPAは金融監査に配属されやすいのか
英語を使う場面が多い
まず挙げられるのが、英語との相性です。
大手金融機関は海外展開しているケースが多く、海外子会社や海外支店を含めたグループ監査も珍しくありません。
外資系の銀行、証券会社、保険会社なども、監査法人にとって主要なクライアントです。
そのため、海外の監査チームとのやり取りや、英文の財務資料・監査資料の確認など、英語を使う機会も比較的多くあります。
USCPAは試験自体が英語で行われるため、少なくとも英文の会計用語や財務情報に対する抵抗感は比較的少ない方が多いです。
監査法人側から見ても、「英語と会計の両方をある程度理解できる人材」は、こうした部門に配置しやすいという事情があります。
US GAAPやIFRSとの接点がある
USCPAでは、米国会計基準を中心とした会計知識を学びます。
日本の監査法人で働くからといって、当然ながらUS GAAPだけを扱うわけではありません。
ただ、金融機関は海外子会社や外国親会社との関係も多く、US GAAPやIFRSに触れる機会は比較的多い分野です。
金融商品や公正価値評価などでは、日本基準だけではなく、海外の会計基準を確認する場面も出てきます。
こうしたときに、英文の基準を読むこと自体に抵抗がないというのは、USCPA取得者の一つの強みになります。
金融監査はチームの規模が大きい
もう一つ、実際の配属を考えるうえで大きいのが、監査チームの規模です。
メガバンク、大手証券、大手保険会社などになると、監査そのものが非常に大きなプロジェクトになります。
国内だけではなく、海外拠点も含めて多数のメンバーが関わることもあります。
そのため、金融部門では日本の公認会計士だけでチームを構成するのではなく、USCPAや金融業界出身者など、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を組み合わせてチームを作ることができます。
こうした背景から、USCPAの方の配属先として、金融部門は比較的大きな受け皿になりやすいという面もあります。
日本の公認会計士との役割分担がしやすい
ここは、USCPAの監査法人転職を考えるうえで重要なポイントです。
USCPAと日本の公認会計士は、どちらも「CPA」という名称が付いていますが、日本国内における資格上の位置づけは異なります。そのため、日本の監査法人で働く場合も、日本の公認会計士とは担える役割に違いがあります。
その一方で、実際の監査業務は、監査報告書にサインをすることだけではありません。
実際の監査現場では、財務数値の検証、内部統制の評価、証憑や契約書の確認、監査調書の作成、海外監査チームとの連携など、多くの業務をチームで分担して進めています。
こうした業務では、USCPAでも十分に力を発揮できる場面があります。
特に金融監査のようにチーム規模が大きい部門では、日本の公認会計士とUSCPA、それぞれの強みを活かして役割分担しやすいと考えられます。
この点も、USCPAが金融監査に配属されやすい理由の一つでしょう。
USCPAを取得する人の志向とも合いやすい
USCPAを取得する方のキャリア志向も、金融監査と相性が良い理由の一つです。
たとえば、
「英語を使って仕事をしたい」
「グローバルな環境で働きたい」
「将来的に外資系企業や海外ビジネスに関わりたい」
と考えてUSCPAを取得する方は少なくありません。
金融機関は海外との接点が多く、監査法人内でもグローバルな仕事に携われる可能性があります。
また、金融監査を経験した後に、金融機関向けのアドバイザリーや会計コンサルティング、内部監査、リスク管理などへキャリアを広げる方もいます。
監査法人側の事情だけではなく、USCPA取得者本人の志向から見ても、金融部門を選ぶ理由はあるということです。
USCPAなら必ず金融監査になるわけではない
ここまで金融監査との相性について説明してきましたが、USCPAだから金融部門しか選べないということではありません。
メーカー、商社、IT、外資系企業などの監査に携わっているUSCPAもいます。
特に、事業会社で経理経験がある方や、特定業界での実務経験、連結決算、IFRSなどの経験を持っている方の場合、その経験を評価されて事業会社系の監査部門に配属されることもあります。
また、監査法人によって金融クライアントの数や採用方針も異なるため、USCPAを金融部門へ積極的に配属する法人もあれば、必ずしもそうではない法人もあります。
一方、金融監査を希望している場合も、「USCPAだから金融に行きたい」だけではなく、上記のポイントを押さえたうえで、なぜ金融業界に興味があるのか、これまでの経験をどう活かせるのかまで整理しておくと、転職活動は進めやすくなります。
まとめ
USCPAが金融監査に配属されることが多いのは、「USCPAなら金融」という決まりがあるからではありません。
一方で、金融監査では海外拠点との連携や英文資料の確認、US GAAPやIFRSとの接点も多く、USCPAが持つ「英語と会計」という強みを活かしやすい環境であることも事実です。
また、大手金融機関の監査はチーム規模が大きく、日本の公認会計士とUSCPAが役割分担しながら働きやすいことも理由の一つです。
USCPA取得後に監査法人への転職を考える場合には、「監査法人に入ること」だけではなく、その先にどのような経験を積みたいのかまで考えておくことが大切です。
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